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『コミュニケーション論のまなざし』―学問、大学、言語学、そしてコミュニケーション論への誘い

飽和したかのようにさも自然に使われる「コミュニケーション」という言葉。

この書籍、『コミュニケーション論のまなざし』はそんなあやふやな「コミュニケーション」を学問していくための視座を提供してくれる書籍だ。

その名の通り、「コミュニケーション論」を学ぶ上での入門書的な本著、決して手は抜きし過ぎずに、むしろちょっと難しい、けど頑張ればちゃんと理解へ導いてくれる良著

基本データと目次

基本データ著者:小山亘
出版:三元社
発行年:2012年4月30日

目次

  1. コミュニケーション論のまなざし
    • まなざし① 大学で学ぶということ
    • まなざし② コミュニケーション論の地平
  2. コミュニケーション論のための言語学の「知の枠組み」
    • 枠組み① コミュニケーション論と心理学、メタ語用論、そして言語学へ
    • 枠組み② 言語学とは何か:導入
    • 枠組み③ 語用論とは何か
    • 枠組み④ 文化的意味範疇とは何か
    • 枠組み⑤ 文化的意味範疇とコミュニケーション
    • 枠組み⑥ 語用論の世界:直示(ダイクシス)と視点
    • 枠組み⑦ 言語と方言
    • 枠組み⑧ 言語の全体:コミュニケーション、方言、言語構造、普遍文法
    • 枠組み⑨ 言語構造の構成と言語変化
    • 枠組み⑩ 言語の全体への〈まなざし〉としての言語学
  3. コミュニケーション論の「知の回路」
    • 回路① コミュニケーションの3つのモデル
    • 回路② 情報伝達モデル
    • 回路③ 6機能モデル
    • 回路④ 出来事モデル
    • 回路⑤ 出来事の視点から見た文法、意味論、語用論:コミュニケーション出来事と普遍文法、再訪
    • 回路⑥ コミュニケーションと視点:参加者の視点、観察者の視点、相互行為の基点
    • 回路⑦ コミュニケーションの変容とオリゴ
    • 回路⑧ コミュニケーション空間の編成、オリゴの転移、主観と客観
    • 回路⑨ コミュニケーション論の視点/まなざし:結語
  4. 知の枠組みと回路のための15冊

『コミュニケーション論のまなざし』概要

本書籍では全体が4つのパートに大きく別れている。

  1. コミュニケーション論のまなざし
  2. コミュニケーション論のための言語学の「知の枠組み」
  3. コミュニケーション論の「知の回路」
  4. 知の枠組みと回路のための15冊

「まなざし」と名を打つ通り、学術的な対象としてコミュニケーションを分析していくための視座を順序立てて論述してくれている。

そう、紹介ではなく論述。つまり、そう簡単に手を抜いているわけではないということだ…

というわけで想定読者はこれまであまり言語学、並びにコミュニケーション論にあまり触れたことのないような大学1・2年生だと言える。

これから「コミュニケーション論」を言語学的な知見から学びたいという人にはピッタリの入門書でしょう。おすすめ!

コミュニケーション論のまなざし

  • まなざし① 大学で学ぶということ
  • まなざし② コミュニケーション論の地平

※枠内は章の小見出し

この本が入門書として優れているなと思うのは、この第1章が非常に素晴らしいからだ。特に冒頭の「まなざし① 大学で学ぶということ」は最高!初めて読んだ時に感銘してしまった。

そもそも学問とは何か?学問をする大学とは何か?大学ではどのような世界が広がっているのか?つまり、どのような生活が各々によって繰り広げられると考えられるのか?時に虚無にひたり、時に学問の真髄へと目覚める、大学が持つ「宇宙」において自身を一歩引いて見れるような多様性が一種確保された稀有な空間であることが強調され語られている。

そのような学問を学ぶ場である大学についてひとしきり語られてたところで、徐々に言語学心理学社会学哲学歴史学といった非常に多岐な分野と不可分的に関わる「コミュニケーション論」の領域へと踏み込んでいく。

コミュニケーション論のための言語学の「知の枠組み」

  • 枠組み① コミュニケーション論と心理学、メタ語用論、そして言語学へ
  • 枠組み② 言語学とは何か:導入
  • 枠組み③ 語用論とは何か
  • 枠組み④ 文化的意味範疇とは何か
  • 枠組み⑤ 文化的意味範疇とコミュニケーション
  • 枠組み⑥ 語用論の世界:直示(ダイクシス)と視点
  • 枠組み⑦ 言語と方言
  • 枠組み⑧ 言語の全体:コミュニケーション、方言、言語構造、普遍文法
  • 枠組み⑨ 言語構造の構成と言語変化
  • 枠組み⑩ 言語の全体への〈まなざし〉としての言語学

コミュニケーションを論じる上ではどうしても関わってくる「ことば」というもの。「ことば」を対象とする学問としての言語学と深く関わることはもちろんだが、「コミュニケーション」を行う上ではどうしても他者の存在が欠かせない。

コミュニケーションをするということはなんらかのメッセージの行き来が起きるわけだが、その時に「ことば」だけでなく「視点」も非常に重要になってくる。

例えば、発信者はどのような立場から「ことば」を発したのか?また、受信者もどのような立場からその言葉を解釈したのか?ということを考えた時に、どうしても「視点」の問題が密接に関わってくる。

そのため、コミュニケーションを考える上では言語学だけでなく心理学的な「視点」も分析対象にしていく必要があるわけだ。

そうした前提の上で、この『2. コミュニケーション論のための言語学の「知の枠組み」』では、まずは基盤となる「言語学」に焦点を置いて徐々に解説され、ことばの「構造」ではなくことばの「使い方」を分析する語用論を中心に、言語学的にはどのように普段馴染んで使っている「文法」といった言葉が用いられているのかが説明されていく。

徐々に明らかになっていく「言語学の概念体系」が途中で図示されていくのだがこれが非常に分かりやすい!

言葉だけでは混乱しがちになるところが、視覚的にまとめられていくので理解の助けになるのだ。

また、当然言語学だけでなく、周辺の心理学や記号論と呼ばれる分野への言及もところどころにある。

「知の枠組み」にてこの本における「ことば」に焦点を当てた言語学の解説は済んでしまう。つまり、ちょっと長い。というかメインだと言えるだろう。

コミュニケーション論の「知の回路」

  • 回路① コミュニケーションの3つのモデル
  • 回路② 情報伝達モデル
  • 回路③ 6機能モデル
  • 回路④ 出来事モデル
  • 回路⑤ 出来事の視点から見た文法、意味論、語用論:コミュニケーション出来事と普遍文法、再訪
  • 回路⑥ コミュニケーションと視点:参加者の視点、観察者の視点、相互行為の基点
  • 回路⑦ コミュニケーションの変容とオリゴ
  • 回路⑧ コミュニケーション空間の編成、オリゴの転移、主観と客観
  • 回路⑨ コミュニケーション論の視点/まなざし:結語

続いては、『2. コミュニケーション論のための言語学の「知の枠組み」』を前提にした上で3つのコミュニケーション・モデルが解説されていく。

  1. 情報伝達モデル
  2. 6機能モデル
  3. 出来事モデル

情報伝達モデルとはいわゆるインターネット等を介してやり取りされるコミュニケーション、6機能モデルとは情報伝達モデルよりさらに細かく状況に応じたコミュニケーション機能(発信・受信・テクスト・媒介など)にそれぞれ焦点が当てられ使われるとするコミュニケーション、出来事モデルとはコミュニケーションを社会において起きる出来事としてやり取りする人と人、人と物、物と物といったもの、つまり社会的コンテクストに焦点が当たるコミュニケーションのモデルだ。

さらに下位の見出しの中でこのようなものがある。

『この本を読む、というコミュニケーション出来事』

たとえばこの本を読んだ僕と著者である小山さんとの間にはコミュニケーションが発生している。

それを僕は僕なりに読み取り、つまり僕の個人史とも言える様々な背景が重なって小山さんが発信した情報を解釈し、さらに僕はこうして誰が読むともしれないインターネット上に発信しまたこれを今読んでいるあなたとのコミュニケーションが発生しているという感じだ。

なんだかちょっと気持ち悪い感じがしなくもないが、実際にこのようにしてあらゆる人はコミュニケーションを通して繋がっているとも言えるだろう。

途中でも書いた通り、この本に通底している考えはコミュニケーションには必ず「基点」となるものが存在するということだ。

それを専門用語で「オリゴ」と言う。

例えば、上で書いた「それ」も話の基点になっているので一つのオリゴだ。

というわけで、言語学とコミュニケーションモデルの説明が済んだところでキーワードである「オリゴ」を中心に再びまとめられていくのが『回路⑤』以降となる。

知の枠組みと回路のための15冊

この章では言語学に関連する基本的な文献が2章の「知の枠組み」で10冊、3章の「知の回路」で5冊それぞれ簡単に紹介されている。

それぞれどのくらいのタイミングで読むのに向く本なのか書いてくれているので自分のレベルに合わせて読み進めやすくなっているので助かるはずだ。

この本の基本的な内容はマイケル・シルヴァスティンという言語学者に依拠しているので、さらに専門的に勉強していきたいという方はチェックしてみるといいかもしれない。紹介されている彼の本『記号の思想:現代言語人類学の一軌跡―シルヴァスティン論文集―』が500Pを越え、なかなか難しいのでその前にもう一冊か二冊挟んでから挑戦していくのがいいだろう。

まだしっかり読みきれていないのだが語用論の観点から読み進めていく場合、『批判的社会語用論入門:社会と文化の言語』というものが次に読むのに良いと思われる。

まとめ

この『コミュニケーション論のまなざし』、冒頭に紹介した通り非常に好みの本なのだがちょっと人を選ぶ点がある。

というのも、かなり一文が長く、頻繁に「つまり」や「言い換えれば」という言葉が使われるので読んでてやや疲れてしまう…

何度も言い返しながら説明してくれているのですぐに理解できないところも分かりやすく説明してくれているともいえるのだが、ちょっと合わない人には合わないかもしれない

敢えてというか読み返してすぐにこの記事も書いているので、やや似たような文体でこの記事も書いてみているだがあまり気にならないようなら読んでみてもいいのではないかと思う。

いや、ホントに良い本だと思うのでおすすめなんで是非読んで頂けたらという感じなのだが最後にそれだけお伝えしておこうと思う。

「コミュニケーション論」を真剣に学びたい方必見だ!

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